解体工事と粉塵

既存の建物を壊す解体工事を行うと、木片やコンクリートなどの塵や埃がどうしても発生します。
その粉塵は、風によって舞い上げられてしまうため、きちんとした対策を施さないでいると近隣からの苦情が発生してしまう事もあるでしょう。

解体工事での素行は、後々の近隣の方との関係にも非常に影響します。
苦情やクレームを放置すると、後々裁判沙汰に発展する恐れもあるのです。

また、何よりも解体工事の依頼主である施主に大きな迷惑がかかります。
解体工事を依頼する方は、業者選びの際には粉塵対策や近隣配慮をしっかりと行ってくれる業者を選定するようにしましょう。

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粉塵対策の基準は「建築物解体工事共通仕様書」にある

実は解体工事での粉塵対策は、法律で義務付けられていません。
ですので、もし解体業者が粉塵対策を十分に行っていなくても法律違反になるという事はないのです。

ですが、国土交通省が定める「建築物解体工事共通仕様書」には解体工事に置いての粉塵対策に関する基準や規定が明記されています。
「建築物解体工事共通仕様書」とは、解体工事での安全対策、廃材の適正な処理方法、アスベスト含有建材の処分方法など様々な問題に対して統一的な対応を図るために定められた解体工事のための規定です。

仕様書には粉塵対策に限らず、解体工事の施工方法や廃棄物の運搬方法などが細かく明記されています。
解体工事業者はこの仕様書に沿って工事を進めていく事が望ましいのです。

「建築物解体工事共通仕様書」にある粉塵対策の内容を知ろう

建築物解体工事共通仕様書の中には粉塵に対して、どのような指示がされているのか確認してみましょう。
解体工事で組まれる足場は、作業用だけでなく防音パネル等を貼って養生用を兼ねる場合が多いものです。

そのため、足場は解体する対象物よりも高く設置し、解体中に破片等が外部に飛来落下しないように防音パネルや養生シートなどで覆うようにします。
防音パネルや養生シートは穴や破れがない物を使用し、隙間から粉塵が飛散しないように注意しなければなりません。

また、粉塵飛散防ぐ時によく使われるのが散水です。
解体作業の際は十分な散水を行って解体対象物を湿らせながら解体します。

粉塵は、空気が乾燥していると周囲へ飛散しやすいので、それを防止するのが散水です。
散水を怠らずに、粉塵対策をしっかりと行ってくれる業者かどうかを見極めるようにしましょう。

解体工事での粉塵被害は健康への悪影響の恐れ

解体工事での粉塵被害は健康への悪影響の恐れ

粉塵というものの、たかが砂埃ではないか、なんて思う方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、たかが粉塵とは言い切れません。

近隣の方の建物や窓、車などが粉塵によって汚されてしまう恐れがあります。
また、外に洗濯物を干していると埃だらけになる事もあるでしょう。

さらには、粉塵被害によって人体にも大きな影響を及ぼす恐れがあります。
アレルギー体質の方だと、アレルゲンの含む粉塵を吸ってくしゃみや鼻水などのアレルギー反応を引き起こしかねません。

解体工事で発生する粉塵には有害物質も含まれる?!

さらに恐ろしいのは、粉塵の中に有害物質が含まれている場合です。
有害物質を吸引して、深刻な病気を引き起こす恐れもあります。

近年では、有害物質の取扱い等は厳しく規定されているのです。
しかし、解体工事業界ではそういった規定を無視して強引に解体する業者も未だに多く存在します。

解体業者選びの際は、そういった有害物質に対する意識の高い業者であるかどうかも選定の基準にしましょう。

解体工事で最も心配な粉塵被害はアスベスト

粉塵に含まれる有害物質の中でも最も心配なのは、アスベストです。
アスベストとは、数年前に大きな問題にも発展しましたが、アスベストによる健康被害がどのようなものなのかはご存知でしょうか。

詳しくみていきましょう。

解体工事でのアスベスト粉塵被害の人体への影響とは?

アスベストを体内に取り込んでしまう事で起こす主な健康障害は、主に肺の病気です。
例えば、アスベストを含む埃を大量に吸う事で異常を起こすアスベスト肺や、アスベストを吸い始めてから20~40年後に出来る肺の悪性腫瘍、いわゆる肺がんの事。

特に、喫煙者がアスベストとニコチンを両方吸ってしまうとリスクがさらに高まります。
他にも、アスベストを吸って30~50年後に胸膜や腹膜などに発生する恐れのある悪性腫瘍、悪性中皮腫も発症する恐れがあるのです。

アスベストの厄介なところは、吸い込んですぐに症状が出るのではなくかなり年数が経ってから重い病になる点でしょう。
上記のように数十年経ってから悪性腫瘍が発見されたりする事が多いと言えます。

解体工事でのアスベストの粉塵除去は専門業者へ

解体工事を行うとき、まず現場の状況を業者に見てもらいます。
その時に、アスベストが含まれている恐れがある場合は専門業者に検査をしてもらい、アスベストの除去工事をしてもらわなければなりません。

アスベストの除去は施主の安全のためでもあります。
しかし、近隣への配慮の点でも必ず専門業者に適切な処置をしてもらいましょう。

解体工事での粉塵対策は近隣への配慮・苦情の発生防止

解体工事での粉塵対策は近隣への配慮・苦情の発生防止

アスベストだけでなく、解体工事で発生する粉塵は近隣への悪影響をもたらす恐れがとても高いものです。
近隣の方の建物や車や洗濯物を汚す事だけでなく、人体そのものに健康被害を及ぼしてしまえば裁判沙汰にまで及ぶ可能性もあります。

粉塵対策自体は法律で定められていません。
しかし、近隣の方との関係を工事完了後も良好でいるためには必要な措置です。

解体工事と粉塵のまとめ

解体工事と粉塵のまとめ

解体工事業者を選ぶ時、施主様が一番気になる所は費用面だと思います。
しかし、ただ安いだけで業者を選ぶのは危険です。

見積もりが安すぎると、とるべき処置や対策を業者が怠っている場合もあります。
粉塵対策に関しては、散水設備を使わなかったり穴の空いた古い養生シートを使ったりして解体作業をするといった、杜撰な工事を業者が行う可能性も考えられるのです。

近隣への配慮も考えた信頼の置ける解体工事業者に工事を依頼するようにしましょう。
解体工事業者を探すときは、インターネットの解体工事業者一括見積もりサイトを利用して複数業者で相見積もりを取る事がポイントです。